何で歯茎が腫れる前に歯医者さんに行くことが大切

リドカインは、細胞膜の「ナトリウムチャネル」という部分で作用します。リドカインはナトリウムチャネルと結合し、ナトリウムイオンの移動を妨害する性質を持っています。簡単に言うならば、「ナトリウムチャネルという場所を封鎖する」わけです。ナトリウムチャネルが封鎖されると、神経伝達ができなくなり、痛みを感じなくなります。

さて、リドカインには「塩基型リドカイン」と「陽イオン型リドカイン」の2種類があります。簡単に区別するなら、「H+(プロトン)」という物質を持っていないのが塩基型、持っているのが陽イオン型です。注射する段階のリドカインは「塩酸リドカイン」という物質で、これは体内で塩基型リドカインに変わります。つまり、麻酔薬として用いられるのは、実質的に塩基型リドカインです。(光重合照射器

局所麻酔―リドカインは、2通りの経路で作用していきます。1つは「細胞膜に入ったあと、細胞膜から、ナトリウムチャネルに移動する」という経路です。この経路を「疎水性経路(そすいせいけいろ」といいます。

もう1つは、「細胞膜を通過して細胞質(細胞の中身)に入ってから、ナトリウムチャネルに移動する」という経路になります。こちらは「親水性経路(しんすいせいけいろ)」と呼びます。親水性経路を通った場合、細胞質の中で「H+(プロトン)」という物質を受け取り、陽イオン型リドカインに変化します。

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どちらの経路をたどるとしても、最初に細胞膜に入らなければいけません。しかし、脂質膜である細胞膜に入り込めるのは、塩基型リドカインだけです。陽イオン型リドカインは、細胞膜に入ることができません。
(細胞の中に入ってから陽イオン型リドカインに変化する分には問題なし)

だから、「少なくとも細胞膜に入りこむ段階では、塩基型リドカインであることが、麻酔として作用するための条件」となります。しかし、炎症が起きている場所は、「アシドーシス」といって「物質を酸性にする働き」があります。「酸性にする」というのは、薬学的には「H+(プロトン)」を追加するという意味です。ですから、炎症が起きている場所に入ると、塩基型リドカインは陽イオン型リドカインに変化してしまいます。(歯科用開口器

大半のリドカインが陽イオン型に変化すると、「細胞膜に入りこんでナトリウムチャネルを目指す」という当初の目的が果たせません。陽イオン型リドカインは細胞膜の中に入れないからです。これが、「ひどい炎症が起きていると、麻酔が効きにくい」という現象のメカニズムです。